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2019年7月 8日 (月)

課題戯曲の紹介! 第4回 岩井秀人「ヒッキー・カンクーントルネード」 

八王子学生演劇祭2019

制作・広報担当の荻山です。

 

課題戯曲、全5作品を先日公表いたしました。

7/13、15の八王子学生演劇祭ワークショップ&説明会までに、僕も勉強をしておこう。

ということで全5作品の作者と作品内容について、全5回に分けて僕の感想も交えてご紹介いたします。

 

 

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課題戯曲を実際に手に取るのは、なかなかハードルが高いなと思います。

そのハードルを越えてもらうためにこのブログでは、「1.作者について 」の章で、どういう作者が書いているのか、どういう人が翻訳しているか、を、インターネットで公開されていることを中心に、僕の主観を交えて紹介します。

 

逆に、「2.作品について 」の章では、物語がどのように始まり、どのような登場人物がどれくらいでてきて、どんなことをするのか、そしてどのように終わるのかを、主観や、具体的な台詞のやりとりを、極力排除して紹介します。

排除した理由は、排除した部分をどんなにがんばって書いても、実際に戯曲上でおこなわれる台詞のやりとりのおもしろさには敵わないからです。

ここに書いてあるのは最低限のことです。なので読んでみてもし気になる戯曲がありましたら、ぜひ、戯曲を手にとってみてもらえると嬉しいです。ここに書いてあることよりも、もっともっと面白いです。

  

 

第4回は、岩井秀人氏の「ヒッキー・カンクーントルネード」です。

  

1.作者について

  

岩井秀人

  

〇岩井秀人主宰の劇団「ハイバイ」のホームページより

http://hi-bye.net/iwai

  

 

チェーホフの戯曲には「家」が存在し、「家族」が描かれる、と、「プロポーズ」の翻訳者である浦氏が本に書いていました。岩井秀人氏の戯曲も、家族についてかかれた作品が多い気がします。

  

  

 

  

2.作品について

  

今回紹介する「ヒッキー・カンクーントルネード」は、もともと岩井氏が所属している劇団「ハイバイ」の上演台本でした。これを高校生用に書き直したものです。

その経緯については、ぜひ下記のホームページを見てください。

http://hi-bye.net/2014/09/01/4224

  

カンクーントルネードとは、プロレスの技です。

ムーンサルト・プレスのようにコーナーポスト上段から後方1回宙返り2回捻りの要領で体固めに移行する技。技の手順はムーンサルトと同じだが伸身で1回宙返りを行いながら2回捻ることから、脚力と腕力に勢いが必要であり、難易度が高い、主な使い手にはウルティモ・ドラゴン、初代えべっさん(現:菊タロー)やハヤブサなど空中殺法が得意な選手が使用することが多い。(wikipediaより抜粋。)
 

  

 

〇登場人物 ※戯曲より引用

森田登美雄(以下、登美雄)

森田綾(以下、綾)

森田母(以下、母)

圭一

黒木香織(以下、黒木)

(声)郵便配達の男

 

 

 

〇あらすじ ※あくまで戯曲上でおこる出来事の羅列です

 

1場

場所:公衆電話ボックス

登場人物 母

夫に公衆電話から電話をかけている。まだ携帯電話がそれほど普及していない時代の話。話の内容から、登美雄という息子の存在と、「出張お兄さん」という謎のフレーズが出てくる。

 

 

2場

場所:森田家のリビング

登場人物 登美雄、綾、母、郵便配達の男

プロレスごっこに興じる森田登美雄、森田綾。そこに呼び鈴がなる。郵便配達の男がやってきた。登美雄は綾にけしかけられながら、たどたどしくその対応をする。

ふたたび呼び鈴。登美雄は玄関に行くことができなかった。呼び鈴の主は母だった。帰って来た母に、さっきは登美雄が玄関まで行ったことを伝えるが、母はあまり信じていない様子。

部屋に帰る登美雄。それを追いかける綾。

 

 

3場

場所:出張お兄さん事務所

登場人物 圭一、母

母は「出張お兄さん」と名乗る圭一に、登美雄について何か相談をしたようだ。

饒舌な圭一に疑いのまなざしを向けながらも、母と圭一は、一緒に森田家に行くことにする。

 

 

4場

森田家のリビング

① 登場人物 登美雄、綾、圭一、母

彼氏ができたことを登美雄に告げる綾。それとは別に、登美雄はプロレスのビデオを友達に又貸しした綾に対して怒っている。やがて激昂する登美雄。綾は友達に電話をする。綾の楽しそうな笑い声。心を閉ざす登美雄。しかし、綾の友達がおわびにメキシコのプロレスラー「ルチャ・リブレ」のビデオを貸してくれるという話になり、登美雄は興奮し自室へ戻る。綾の携帯電話に、今度は彼氏から電話が。楽しく話す綾。

そこに、プロレスのコスチュームに着替えた登美雄が帰ってくる。気をつかう綾。

 

 

② 登場人物 登美雄、綾、圭一、母

母が「出張お兄さん」の圭一を連れて帰ってくる。部屋に逃げ去る登美雄。

圭一はそれを追って、登美雄の部屋へ入っていく。憤る綾。困惑する母。

やがて登美男の部屋から、2人の楽しそうな笑い声が聞こえる。

 

 

5場

場所:森田家のリビング

登場人物 登美雄、綾、圭一

すっかり仲良くなった登美雄と圭一。おそろいのプロレスマスクをかぶり、タッグチームを組んだと綾に伝える。圭一と付き合うよう綾にすすめる登美雄。その気になる圭一。突然のことに戸惑い、激昂する綾。気まずさからか、登美雄と圭一はプロレスをはじめる。立ち去る綾。

 

 

6場

場所:出張お兄さん事務所

登場人物 黒木、母

黒木は母に、圭一は「出張お兄さん」ではなく、過剰適応症(とびこもり)の患者、研究材料であることを伝える。圭一を連れ戻すと共に、登美雄の問題も解決するという黒木。関わり合いになりたくなさそうでありながら、押し切られる母。

 

 

7場

場所:森田家リビング

登場人物 登美雄、綾、圭一

登美雄と圭一は楽しくトレーニングをしている。そこに綾が帰ってくる。呼び鈴がなる。おびえる登美雄のかわりに圭一が対応するが、そこにいたのは黒木だった。

逃げようとするも黒木につかまった圭一は、登美雄に助けを求める。登美雄は、自分と圭一がタッグチームを組んだと説明するが、黒木は移籍金(百万ドル)を払わないと圭一を連れて行くと登美雄を追い詰める。圭一を連れて行かないでほしいと懇願する登美雄に、黒木は「百万ドルを払う代わりに、お買い物に行ってきて欲しい」と、提案する。

 

 

8場

場所:公衆電話ボックス

登場人物 母

夫と電話をしている母。「出張お兄さん」のことで大変なことになっていると伝えるが、夫は仕事が忙しいからと真剣にきいてくれない。憤る母。

 

 

9場

場所:森田家のリビング

① 登場人物 綾、圭一、母

買い物に行った登美雄を心配する綾と圭一。そこに母が帰ってくる。登美雄が自分の意思で買い物に行ったことに驚き、喜ぶ母。黒木はその後を追跡しているという。すぐに夫に連絡すべく公衆電話に向かうが、もう公衆電話に行かなくてもいい、と綾に告げられる。母は喜び、春巻きをつくることにする。

 

 

② 登場人物 綾、圭一、母、黒木、登美雄

登美雄が血だらけになって帰ってくる。声も出ない綾。申し訳ないと誤る黒木。出て行けと叫ぶ母。母は黒木にびんたをする。これは「買い物療法」だったと説明する黒木。そして、今日はワースト、これ以上悪くなることはない、明日も外に出るようにと、登美雄に強く語りかける。黒木を追い出そうとする母。部屋に居続けることの何が悪いのかを問いかける綾。やがて皆が去り、登美雄は1人うなだれている。

 

 

10場

場所:森田家のリビング

登場人物 登美雄、綾、母

母と綾はテーブルでテレビを眺めている。綾は黒木と電話をしている。登美雄はリビングに顔を出すが、すぐに部屋に戻ってしまった。綾は黒木から、登美雄が血だらけになって帰って来た日の顛末を聞く。それは悲しい話だった。しかし、母はリュックの中から出てきたコスチュームや大量のプロレス雑誌、そして、圭一に「お買い物」として頼まれたであろうエロマンガを見つけ、爆笑する。それをいさめる綾。綾は部屋へ戻る。母は机の上に、それらを並べ、しばしの沈黙の後に、去る。

 

 

② 登場人物 綾、母

登美雄がエロマンガを回収しにリビングに戻ってくる。エロマンガを開いて、ニヤニヤしている。そこに興奮した綾が飛び込んでくる。窓の外の公園に「みちのくプロレス」が来るという。驚く登美雄。綾は先に行っている、と伝え、その場を去る。

1人とりのこされた登美雄。外からは登美雄を誘う綾の声。玄関を見つめる登美雄。

ざわめきが大きくなる。

 

 

(終わり)

 

 

3.あとがき

 

僕はこの終わり方が、とても好きです。

最後、登美雄はどうなるだろう、みたいな議論はあると思いますし、色々な解釈があってよいなと思います。

でも僕は、きっと「みちのくプロレス」をもし観に行けなかったとしても、そう遠くないうちに、登美雄は外に出るだろうなと思います。

 

 

 

途中の会話も、なんとも笑ってしまうものが多いのですが、みんな切実です。切実ゆえに笑ってしまうのですが、出来事は悲しい。あれ、この感想、チェーホフの時にもあったような…。

登美雄はひきこもっており、家族は多かれ少なかれ登美雄のことを大切におもっています。

でも、自分のことをどうにかできるのは、最後の最後は自分だけだよな、と思います。

 

 

 

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八王子学生演劇祭2019とは

10代から20代半ばの若者が主体的、かつ、圧倒的に輝く舞台芸術創作を応援するため、2016年から毎年、八王子市芸術文化会館(いちょうホール)にて実施している。2018年は12月21日~23日の3日間、市内外で活動している7団体による公演を実施し、入場者数は600名を越えた。

2019年度からは総合ディレクターを起用。さらなる若者の演劇活動への支援、市民への演劇の普及を目的とし、「みんなで創る演劇祭」としてスタートした。

 

日時:2019年12月21日(土)、22日(日) 

場所:いちょうホール(小ホール)

 

twitter:@hachioji_engeki

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