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2019年7月 5日 (金)

課題戯曲の紹介! 第2回 多田淳之介「3人いる!」

八王子学生演劇祭2019

制作・広報担当の荻山です。

 

 

2019ver31p_20190705090001

 

課題戯曲、全5作品を先日公表いたしました。

7/13、15の八王子学生演劇祭ワークショップ&説明会までに、僕も勉強をしておこう。

ということで全5作品の作者と作品内容について、全5回に分けて僕の感想も交えてご紹介いたします。

 

 

課題戯曲を実際に手に取るのは、なかなかハードルが高いなと思います。

そのハードルを越えてもらうためにこのブログでは、「1.作者について 」の章で、どういう作者が書いているのか、どういう人が翻訳しているか、を、インターネットで公開されていることを中心に、僕の主観を交えて紹介します。

 

逆に、「2.作品について 」の章では、物語がどのように始まり、どのような登場人物がどれくらいでてきて、どんなことをするのか、そしてどのように終わるのかを、主観や、具体的な台詞のやりとりを、極力排除して紹介します。

排除した理由は、排除した部分をどんなにがんばって書いても、実際に戯曲上でおこなわれる台詞のやりとりのおもしろさには敵わないからです。

ここに書いてあるのは最低限のことです。なので読んでみてもし気になる戯曲がありましたら、ぜひ、戯曲を手にとってみてもらえると嬉しいです。ここに書いてあることよりも、もっともっと面白いです。

  

 

第2回は、多田淳之介氏の「3人いる!」です。

 

  

  

 

1.作者について

  

多田淳之介

  

〇文化庁ホームページ「多田淳之介」

https://culturalenvoy.jp/envoys/envoy_eastasia/h2611.html

 

 

〇多田淳之介氏主宰の「東京デスロック」ホームページ

http://deathlock.specters.net/

 

  

 

八王子市でも過去に何度も演劇ワークショップを行っています。

今、とても勢いのある演出家です。実験的な作品も多いですが、戯曲の本質、演劇であること、その場にいる人たち、それが社会にどのように伝わるかについて、とても真摯な方だな、という印象です。

  

 

 

 

 

2.作品について

  

2017Verとなります。3人の登場人物を3人の俳優が演じますが、3人の俳優は、3つの役を入れ替わりながら演じます。

ややこしいので3人の俳優を、A(女性)、B(女性)、C(男性)と便宜上呼ぶことにし、各パートの最後にどの役を誰が演じているかを書きます。

また、場所もメインとなる空間を、便宜上記載しますが、空間の境を越えるようなト書きがあります。

  

 

〇登場人物 ※戯曲より引用

本田 りえ

中島 貴子

北見 篤人

 

 

〇あらすじ ※あくまで戯曲上でおこる出来事の羅列です

場所:本田りえの部屋

 

(1) 登場人物:本田(1・2)

本田(本田1)が部屋でスマホをいじっていると、そこにもう一人、本田(本田2)を名乗る女性が現れる。互いに自分が本物だと主張し、互いを不審者だと訴える。そのうち、2人は同じ記憶をもっていることが分かる。友人の中島から「今日、本田っぽい人を渋谷で見た」というLINEが来ており、中島に電話することにする。

本田1:A

本田2:B、途中からC

  

  

(2) 登場人物:本田(1・2)

中島に電話をする本田2、中島と話したがる本田1

本田1:B、C

本田2:A

 

 

(3) 登場人物:本田(1・2)

中島と電話で話す本田1、渋谷で見かけた人の髪型について中島に聞くが、「ちょうど本田くらいの髪型だった」といわれる。

本田1:B

本田2:A、C

 

 

(4) 登場人物:本田(1・2)

中島と電話で話しをする本田2、再び髪型のことを聞くが、会話がかみ合わない。

本田1:B

本田2:A、C

  

  

(5) 登場人物:本田(1・2)

中島と電話で話しをする本田1、スピーカー通話をすることにする。

本田1:A

本田2:B、C

 

 

(6) 登場人物:本田(1・2)、中島

本田にすごく似ていたことを主張する中島。どこまでもかみ合わない2人(3人)の会話。本田は中島を家に誘うが断られ、結局、中島の家に押しかけることにする。

本田1:C

本田2:B

中島:A

 

 

場所:中島貴子の部屋

(7) 登場人物:中島(1・2)

本田からの電話を切り、くつろいでいた中島(中島2)。そこに中島(中島1)がやってくる。互いに自分が本物だと主張し、互いを不審者だと訴える。そのうち、2人は同じ記憶をもっていることが分かる。かみ合わない会話。

中島1:B

中島2:A

 

 

(8) 登場人物:中島(1・2)、本田

本田がやってくる。中島1、2は本田に、自分がどのようにみえているかを尋ねる。

本田も中島に、自分がどのように見えるかたずねる。中島には本田が1人、本田には中島が1人いるように見える。でも、本田も中島も、自分を含めて3人がこの空間にいることを主張し、意見が一致する。が会話はかみ合わない。

中島1:B

中島2:A

本田1、2:C

 

 

(9) 登場人物:中島、本田

中島は自分と、もう1人の自分を指差すが、本田からみると、自分を2回指さしているだけである。

中島:A

本田:B、C

  

  

(10) 登場人物:中島、本田

中島は自分と、もう1人の自分を指差すが、本田からみると、自分を2回指さしているだけである。

中島:A

本田:B、C

  

  

(11) 登場人物:中島、本田

本田は自分と、もう1人の自分を指差すが、中島からみると、自分を2回指さしているだけである。

中島:A、C

本田:B

  

  

(12) 登場人物:中島、本田

なんとなく状況を理解し始める中島。

中島:C

本田:A、B

 

 

(13) 登場人物:中島、本田

なんとなく状況を理解し始める本田。

中島:A、C

本田:B

 

 

(14) 登場人物:中島、本田

自分がずっと独り言を話しているのかもしれないと感じ、恥ずかしがる中島。舞台上では俳優Bが1人で、2人の中島を演じている。置いてけぼりの本田。

中島:B

本田:A、C

  

  

(15) 登場人物:中島、本田

今この場に、中島が2人、本田が2人いることを理解する中島。置いてけぼりの本田。

中島:A、B

本田:C

  

  

(16) 登場人物:中島、本田

中島は、自分で、もう一人の中島を叩く。本田からは中島が、自分で自分を叩いているようにみえる。

中島:C

本田:A、B

 

  

(17) 登場人物:中島、本田

もう一度中島は、自分で、もう一人の中島を叩く。本田からは中島が、自分で自分を叩いているようにみえる。(16)時点から、演じる俳優が変わっている。以降、そのパターンが続く。

中島:A、C

本田:B

 

 

(18) 登場人物:中島、本田

もう一度中島は、自分で、もう一人の中島を叩く。本田からは中島が、自分で自分を叩いているようにみえる。

中島:C

本田:A、B

 

 

(19) 登場人物:中島、本田

もう一度中島は、自分で、もう一人の中島を叩く。本田からは中島が、自分で自分を叩いているようにみえる。

中島:B

本田:A、C

  

  

(20) 登場人物:中島、本田

もう一度中島は、自分で、もう一人の中島を叩く。本田からは中島が、自分で自分を叩いているようにみえる。

中島:A

本田:B、C

 

 

(21) 登場人物:中島、本田

もう一度中島は、自分で、もう一人の中島を叩く。本田は、中島が自分をからかっているのではないかと感じはじめる。

中島:A、B

本田:C

 

 

(22) 登場人物:中島、本田

中島は本田に、「からかってなんかない」と伝える。もはや誰に何を話しているのか分からなくなってくる。直前まで中島を疑っていた俳優は中島になり、疑われていた中島は本田になっているからである。

中島:B、C

本田:A

 

 

(23) 登場人物:中島、本田

鏡を見てみることを思いつく2人。鏡をみる。中島にも本田にも、自分は2人いるように見えている。

中島:B

本田:A、C

 

 

(24) 登場人物:中島、本田

本田には中島が、中島には本田が1人しかいないように見えている。状況は変わらない。

中島:A、B

本田:C

 

 

(25) 登場人物:中島、本田

お互いを指差しあう中島と本田。指を差しながら、俳優も激しく入れ替わる、結果、みんなは本田がCである、と説明することになる。

中島:B→(A、B)→A→(A、B)

本田:(A、C)→C→(B、C)→C

 

 

(26) 登場人物:中島、本田

混乱する中島、本田。お互いを信用できないと言い合いになる。中島も本田も、その大半は独り言をいっているように観客からは見える。が、中島はもう1人の中島と、本田はもう1人の本田と会話している。家に帰るという本田のうちの1人。

中島:C

本田:A、B

 

 

(27) 登場人物:中島、本田

本田のうちの1人がでていくと、本田はどうなるのか。中島からはどう見えるのか。

中島:A、C

本田:B

 

 

(28) 登場人物:中島、本田

本田はもう1人の本田に、出て行けとあおる。出て行くもう1人の本田。

舞台上には中島が1人、本田が1人残る。やがて戻ってくる本田。観客にはそのことが分かるが、中島にはそれが分からない。

中島:A

本田:B、C

 

 

(29) 登場人物:中島、本田

また本田が外に出て行く。今度は中島が2人残る。しばらくして本田が戻ってくる。観客にはそのことがわかるが、中島にはそれがわからない。

中島:A、B

本田:C

 

 

(30) 登場人物:中島、本田、北見

今度は中島が出て行く、そんな話をしていたときに、北見が現れる。

北見は本田の元カレ、今は中島とつきあっている。ざわつく本田たち、島田たち。

本田たち、島田たちは北見に状況を説明するが、どうやら北見も、もう1人の北見を連れてきたらしい。

中島ともう1人の中島:A

本田ともう1人の本田:B

北見ともう1人の北見:C

 

 

(31) 登場人物:中島、本田、北見

複雑な中島、本田、北見の関係。気まずい会話。そのうち口論が始まるが、俳優が激しく入れ替わるため、観客からは誰が誰に話しかけているのか分からない。

やがて本田のうちの1人(俳優B)が部屋を出て行く。

中島ともう1人の中島、本田ともう1人の本田、北見ともう1人の北見:A、B、C

 

 

(32) 登場人物:中島、本田、北見

幾つかの会話の後、北見のうちの1人(俳優C)が部屋を出て行く。

中島ともう1人の中島、本田、北見ともう1人の北見:A、C

 

 

(33) 登場人物:中島、本田、北見

幾つかの会話(俳優Aが1人でしゃべっている)の後、中島のうちの1人(俳優A)が部屋を出て行く。舞台上には誰もいなくなるが、中島と本田と北見がそれぞれ1人残っている。

中島ともう1人の中島、本田、北見:A

 

 

 

3.あとがき

 

がんばって書き出しましたが、はたして僕の理解はあっているのか。

それくらい激しく役が入れ替わり、観客からの見え方も変わります。

 

 

最初は本田1人を3人で演じ、次は本田と島田の2人を3人で演じ、北見が現れると3人を、やっと3人で演じます。

でもそこには6人の人間がいて、その6人の人間を3人で交代しながら演じます。

やがて1人が部屋を出て5人になります。そして4人になり、最後3人になるのですが、舞台上には実際の人間はだれもいなくなります。

ものすごく気持ちのいい構造だなと思います。

 

 

偏見かもですが、演劇ならではの展開だな、と思います。

これは「どこまで伝わるのだろう?」と、思います。

演劇という表現と、演じる俳優と、観客のことを信じているからこそ、こういう作品がつくれるのだなと思います。

それは好奇心だと思います。あるいは挑戦だと思います。

 

 

いや・・・それにしても、なぜ3人のもとに、もう1人の自分が現れたんですかね。

それは何を暗示しているのでしょうか。

 

そして僕の前にもう1人の僕が現れたら、最初、口論はするでしょうが、僕らは2人で協力して生きていく道を選びますね。

交代で働いたり、休んだり、仕事を手分けしたりして。でも、食費とかが倍かかるのか…。それは困るな…。

娘(1歳)と遊んでいるもうひとりの僕。うーん…嫉妬してしまうな…。しかしその隙に、映画でもみにいこうかな。ちゃんと娘の世話ができるのかな。でも娘にももう1人の僕はみえるのかな。そのとき娘は1人なのかな。僕と同じく実は2人になっているのかな。もう1人の僕はちゃんと娘の面倒がみられるのかな。あてにならないな。大丈夫かな…。
  

読み終えて、そんなことを思いました。

 

 

 

 

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八王子学生演劇祭2019とは

10代から20代半ばの若者が主体的、かつ、圧倒的に輝く舞台芸術創作を応援するため、2016年から毎年、八王子市芸術文化会館(いちょうホール)にて実施している。2018年は12月21日~23日の3日間、市内外で活動している7団体による公演を実施し、入場者数は600名を越えた。

2019年度からは総合ディレクターを起用。さらなる若者の演劇活動への支援、市民への演劇の普及を目的とし、「みんなで創る演劇祭」としてスタートした。

 

日時:2019年12月21日(土)、22日(日) 

場所:いちょうホール(小ホール)

 

twitter:@hachioji_engeki

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