一緒に創ろう!個人参加の話③ ざきりんさんの話・どういう稽古場にしてきたいか・参加者に期待すること
八王子学生演劇祭制作・広報の荻山です。
前回に引き続き、「一緒に創ろう!個人参加」の対談。今日は最終回です。前回はこちら。2回目はこちら。
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上演日時:2020年12月19日(土)、20日(日)
会場:いちょうホール(小ホール)予定 ※上演形式については変更する可能性があります。
デザイン:こばやし帝国
<お話をする人のプロフィール>
中込 遊里(なかごめ ゆうり)
1985年日野市生まれ。都立八王子東高校出身。日本大学芸術学部在籍中、演出と演技を中心に学ぶ。卒業制作公演「夏の夜の夢」(作・シェイクスピア)では歴代最高の動員数を記録。大学在籍中に「鮭スペアレ」旗揚げ(2006年~)。シェイクスピアなどの古典作品を、生演奏の音楽劇として演出する。2014年・2015年「利賀演劇人コンクール」奨励賞受賞。2016年より立川市の文化創造施設「たちかわ創造舎」に劇団の拠点を構え、中高校生と演劇創作する「たちかわシェイクスピアプロジェクト」を開始。これまでのワークショップ参加者は150名を超える。その場に集う人々の力をどこまでも信じることから作品を編み出すことをモットーとする。
清水 いつ鹿(しみず いつか)
撮影:木村護
東京都中野区出身。小中高と9年間演劇部に所属。日本大学芸術学部演劇学科演技コース在籍中、「鮭スペアレ」に入団し、以来俳優として活動を続ける。同団体には第2回公演以来全作品に出演。劇団の看板として、安定した低音声で劇世界の根底を支える。2017年より「たちかわシェイクスピアプロジェクト」でのワークショップ講師も務める。
宮崎 悠理(みやざき ゆうり)
大阪府東大阪市出身。桜美林大学卒業。高校は大阪市立の演劇学科を卒業。現在はフリーの俳優として舞台を中心に活動しており、コンテンポラリーダンス作品や映像作品にも出演している。また、演劇を用いたコミュニケーションワークショップのファシリテーターとしての活動に注力しており、小学生から高校生を対象にコミュニケーション能力向上を目的としたワークショップを都内外問わず実施している。
今年はどういう作品づくりを目指すのか、演劇祭の総合ディレクターであり、「一緒に創ろう!個人参加」の演出を行う中込遊里さん(以下、中込)、演出助手の清水いつ鹿さん(以下、いつ鹿)、宮崎悠理さん(以下、ざきりん)からお話を伺いました。
― 今回は初めて演出助手という形で、ざきりんさんに参加してもらうのですが、どういう経緯でそうなったのですか?
中込:私は年間で沢山ワークショップをやっているんですが、専門的にそういう勉強をしたことはなくて。ざきりんは、ワークショップファシリテーターの仕事をしていて、そういう部分に興味がある人と一緒に仕事をしたいと考えて声をかけました。
― どんな部分に期待していますか?
中込:年齢が私と参加者たちの丁度中間なので、視点や感覚の違いを基に、作品に切り込んでくれる事を期待しています!
ざきりん:なるほど。初めて聞きました(笑)。
いつ鹿:今、初めて(笑)。
ざきりん:はい(笑)。
― 普段は、どのような活動をされているんですか?
ざきりん:今、小学校や中学校で、演劇を用いた授業の一環として、コミュニケーションワークショップを行っています。
― 楽しそう。でも、演じること、というのは子供達にはそんなに馴染みがないですよね?
ざきりん:うんうん。演じるとなるとやっぱり恥ずかしがる子供達もいるんですが、みんなを巻き込んで、演劇創作を一緒に行う。そうすると、いつもとは違うコミュニケーションが生まれて、とても楽しいです。
― なるほど。ざきりんさんは、いつから演劇を始めたのですか?
ざきりん:私は高校から演劇をはじめたんですが、演劇部ではなく演劇学科からスタートしました。舞台の事を知らない中で演劇を始めたので、楽しめなくて、1年間荒れに荒れた生活を送り・・・。
いつ鹿:荒れに荒れた(笑)。
ざきりん:本当に、演劇、大嫌い。と、その頃は思っていて。恥ずかしくて仕方がなくて、演劇(笑)。
中込:そんなに(笑)。
ざきりん:でも高校で演劇学科に入ったから、3年間は演劇をやらないといけない。どうしようって。
中込:でも、今も続けてるんだよね、演劇(笑)。
ざきりん:そうなんです(笑)。
いつ鹿:何で続けようと思ったの?
ざきりん:高校2年生のときに、それまで学校で教わっていた演劇とは、違うタイプの演劇を教える講師の人が来て、その人のワークショップを受ける機会があったんです。そうしたら、その内容にはまってしまって。
― 演劇も色々な種類がありますからね。
ざきりん:そうなんです。演劇って本当に沢山の種類があって、1つの考えに固執しないって凄く大事だなって思っていて。演劇には、演劇を嫌いになってしまいやすい、危うさもある。でも演劇でしか自分のことを知ることができない。自分を知って、他者を知って、価値観を知って、話を擦り合わせる事ができるようになる、合意形成がとれるようになる、そのことを高校2年生の時に知ることができて。
中込:いい出会い。
ざきりん:そして大学に入ってからは、お客さんからお金を頂いて活動をするようになった。そうすると高校の時に感じていた、みんなで作る楽しさだけではなく、演劇は個人作業も多いということを知った。ちゃんと役のことを考えて、作戦を立てて稽古に臨む。そういう孤独な時間も演劇にはあって、それを楽しめたことが、今まで演劇を続ける糧になっている。
ざきりん:演劇を楽しめた瞬間が、15歳から25歳くらいの時にあったのは、私にとって貴重な経験だったと思っています。これからどう演劇と付き合っていくのか。このあと演劇を続けなくても、演劇から得たものは大きい。でも、演劇を続けるのなら、みんなでつくる楽しさだけじゃない、何かもう一つ自分の中で楽しいと思えることを見つける必要がある。その楽しさを参加者と一緒に見つける作業が、この個人参加の活動の中で出来たらと思っています。
― 確かに若い時期に、色々な価値観に出会うのは大切だと思います。
中込:思い返すと、去年参加してくれた人達は、演劇に凄くこだわりがある人が多かった。「演劇は好きだけど続けていけるのか」、「演劇とどのような関わり方をしていけばいいのか」を考えている人達と一緒に、とても刺激的な作品創りができた。やっぱり演劇は楽しいから、続けて欲しい。演劇と長く付き合っていける環境を作るのが私の目標で、この個人参加の活動はその目標につながっていると考えています。
― いつ鹿さんは、今年はより演技の方をサポートしていく形になるんですか?
中込:俳優だからこそわかる細かい部分をアドバイスしたり、一緒に表現方法を考えたりという部分を、サポートしてもらおうと思っています。ただ演技全般に関しては、〇〇メソッドみたいな訓練は行わない予定です。
― どんな演技を参加者に求めるのですか?
中込:他者と関わるための手段としての演技を発見してほしい。日常生活で他者と活き活きと関わることってけっこう難しいじゃないですか。でも、演技を通せば、不思議と人にうまく何かを伝えることが出来るような気がするし、相手の言葉を聞くことの大切さがわかったりもします。戯曲にある事を表現するのはもちろん、その上で活き活きと舞台上にいられるための演技を一緒に考えたい。
― とすると、どのようになっていくんですか?
中込:その為には、即興が大事だと思っていて。即興の比率を上げていくと、作品はリアリティに寄っていく。ファンタジーになりにくいやり方なんだけど、でも最終的にはファンタジーにする。ファンタジーによって、家族というファンタジーを語らない。そういう事をやりたい。
― ファンタジーによって、家族というファンタジーを語らない。もう少し教えてください。
ざきりん:自分を隠すための小手先をあまり使わず、自然に舞台上にいられることを目指す、みたいな。
中込:そうそう!伝わってる!自分を厚塗りして舞台に立つわけではなく、自分の本名で堂々と舞台に立てる感じにしたい。
ざきりん:土台みたいなのがないと、演じるのは難しくて。自分を演じる上で、やっぱり土台は必要で。でも土台の上では裸。そこに色々な衣装を着せたくない。
― なるほど。
中込:土台がないと創作じゃなくなっちゃうからね。創作を通して、自分じゃないものを演じているはずなのに、すごく楽だなって感じられるといいなって。その時に、今回、家族という仕組みを使う。カリソメの家族になる、みんなで一緒に舞台上で暮らすぞ、みたいなことをしたい。もちろん、家族だからって一緒に暮らしません、っていう結論になるかもしれないけど。
― なるほど。
中込:なので進め方としては去年と一緒で、まずはみんなで家族について考え、話すところからスタートする。集まってくれた人の適正を見ながら、役割を割り振っていこうかなと。
― なるほど。
中込:そして、前回も即興の要素をかなり取り入れたんだけど、即興で作ったものを台本にするという事が多かった。今年は、本番、舞台上で即興で演じるシーン、というのが増えるかなと思う。
― なるほど。
中込:さっきから、なるほど、しか言ってないですけど。
― すみません・・理解が追い付かず。。
中込:でもこの話って、きっと言葉じゃうまく伝わらないので、参加者には言わないつもりです。
― ん・・?あれ?じゃあ、この話は書かない方がいいですか?
中込:・・・
― インタビュー・・・なのですが・・・ ?
中込:おまかせします!
― 最後に、どんな人に参加してほしいですか?
中込:悩んでいる人。
いつ鹿:危ない。同じこと言いそうだった(笑)。
中込:演劇が辛い、嫌いって人が来てくれたら、好きにさせてあげることはできないけど、嫌いでいても良いって状況はつくってあげられる。私も昔は嫌いな時期があったけど、今は好きだし。辛さを軽減するための手伝いは出来るかなって。
ざきりん:私は、家族にあまり想いが無い人に来て欲しい。自分の家族って普通だって思う人が多い気がして。でもそれは人から見ると普通じゃない。他の人と、自分の家族とは違うから。自分の家族が普通だよって思う人と、実は普通じゃない部分を考えていく事が出来たら良いな、と。
いつ鹿:私は、逆に、自分の家族に違和感がある人に来てほしい。家族ってなんでこうなんだろう。理想の形はあるけど、そうはなれない。悩んでしまう。自分に対して怒ってしまう。でも悩んでもいい、怒ってもいい、理想の形とズレがあってもいい。一緒に演劇創作をすることで、そういう風に考えられるようになるんじゃないかな、と思います。
終わりです。
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geishin78@hachiojibunka.or.jp(担当:荻山)
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