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2020年11月17日 (火)

【レポート】たちかわシェイクスピアプロジェクト「ぐるぐる歩けば中高生が創った劇的な空間に出会える演劇」

八王子学生演劇祭2020

制作・広報の荻山です。

 

2020年9月に八王子市学園都市センターで行われた、たちかわシェイクスピアプロジェクトの成果発表公演について、準備からその活動を見守ってくれた早坂彩さん(演出家・脚本家)が、レポートを作成してくれました!

 

すごいことに挑戦していたのだな、参加者のみんなは、そしてそれを支えた大人たちは、と、レポートを読むと改めて思います。

ありがとうございます!!

 

 

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今回は、20209月に行われた、たちかわシェイクスピアプロジェクト「ぐるぐる歩けば中高生が創った劇的な空間に出会える演劇」についてレポートします!

たちかわシェイクスピアプロジェクト(=T S P)は、八王子学生演劇祭の総合ディレクターでもある中込遊里さんが、多摩地域の中高生と、シェイクスピア作品を通して、作品作りを行うプロジェクトです。

  

今回はT S Pを、おとなの演劇人として稽古から本番まで見守っておりました私、早坂が、発見したこと、感じたことをレポートいたします!

  

20201月に、T S Pのワークショップは始動しました。当初は、7月に成果発表公演として、公演を行う予定だったそうです。

 

しかし、2回目の対面ワークショップを行ったあと、新型コロナウィルス感染症拡大によって、中学校・高等学校は休校に。日常生活を取り巻く環境は様変わりしてしまいました。

 

計画の変更を余儀なくされながらも、2020年度のT S Pは、形を変えて再始動したのでした。(すごい!)

 

7月までのワークショップは全て、Zoomを通じたオンライン形式に。会うことを前提とせず制作を行い、“展示型演劇”という新たな形で成果発表公演を行うことを目指して、走り出したのでした。

  

ワークショップのある日、遊里さんから中高生の皆へ、お題がでました。

  

「あなたにとっての『劇的な瞬間』を教えてください」

  

めいめい思う「劇的な瞬間」を思い浮かべて、ワークショップ中に発表していきます。

  

「昨日家であったびっくりした出来事」、「自分の好きなこと」、「紫陽花を見て気づいたこと」など、コロナ禍の日常で、一人ひとりが経験した様々な「劇的」が語られていきます。それぞれの出来事が劇的で、また、それを語る皆の姿が不思議と劇的!

自分の中に芽生えた気づきや感情を、誰かに伝えようとする行為そのものが、演劇的なのだと感じた時間でした。このワークショップは、「劇的なる一分間」として、一つの作品になりました。

  

演じることは、そんなに難しいことじゃない。

  

なかなか、台本にかぶりついて公演の練習ばかりしていたら気づけないことだと思います。

(中高演劇部時代の私に聞かせてあげたいです。)

 

 

 

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photo by bozzo

 

 

 

ある時は、「無人でも出来る演劇って何?」というテーマで植村真さん(演出家・照明家・美術家)によるワークショップが開催されました。植村さんご自身の、無人演劇祭を企画されたお話に始まり、「演劇とは何なのか?」という問いかけもありました。演劇への新たな視点をご提示いただいたように思います。

  

そもそも、演劇と一口に行っても、オーソドックスな古典劇から現代のドキュメンタリー演劇まで、多くの形があります。

 

そのどれもが本質的な部分では通じていて、それぞれの時代で、表現者が「演劇って何?」という問いを突き詰めたからこそ、多様な作品、形式が生み出されてきたのかもしれない、と思いを馳せた時間でした。

  

このワークショップは、中高生にとっても、「演劇って自由なんだ!」「いろいろな表現をしていいんだ!」と考える端緒になったのではないでしょうか。“展示型演劇”の作品作りへの道しるべになったのではないかと思います。

(この講義も、中高演劇部時代の私に聞かせてあげかったです。笑)

  

成果発表公演の “展示型演劇”では、ひとつの空間で、『ロミオとジュリエット』『テンペスト』『ハムレット』『リチャード三世』の四作品が上演されました。

 

しかも、それぞれ異なった展示形式で……!

  

『ロミオとジュリエット』では、大スクリーンで上演される幾多のロミオとジュリエットの会話に耳を傾けることができました。スクリーンを見ながら、ソファに座って、ヘッドホンをつけて、ゆっくり鑑賞できるスタイルで、お客様も寛ぎながら、上演を楽しまれているようでした。

 

T S Pの『ロミオとジュリエット』には、たくさんのロミオとたくさんのジュリエットが登場します。この作品では、「ロミオ」と「ジュリエット」と呼び合う、親しい関係性の二人(もしくは三人)の会話を鑑賞できます。

 

創作過程で何が行われていたかというと、演者である中高生には、別の人が日常で体験したエピソードと、登場人物同士の関係性が伝えられます。その設定を踏まえて、相手を「ロミオ」「ジュリエット」と呼び合いながら、演者たちは会話し、即興で物語を作っていきます。設定のあるエチュード(即興劇)とも言えますが、全てのチームの会話がもれなく劇的で、面白かったことが印象的でした。

 

創作過程で遊里さんが設定する登場人物の関係性が絶妙で、演者それぞれが、与えられた登場人物に自分を当てはめながら、他の人から聞いたエピソードを咀嚼し、対話を生み出していく様が、極めて劇的だったのです。その躍動感が映像におさめられていたように思います。

 

 

 

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photo by bozzo

※スクリーンに映っているのが「ロミオとジュリエット」

 

 

 

『テンペスト』は、Zoomを通じて、俳優と観客が交流できるリモート演劇として上演されました。演者である中高生は、登場人物の一人であるトリンキュローに扮して、観客を戯曲の中の登場人物と見立て、話しかけながら芝居をします。時折、物語の要所で、お客さんにお手伝いをお願いします。

  

演者である中高生は、完全に別室で、Zoomの先にいる観客の反応を見ながら、物語を進めていきます。

 

ゴールデンウィーク明けの稽古ではじめて参加した1年生たちも含め、演者一人ひとりが、創意工夫をもって、立派に演じていました。

 

『テンペスト』は、創作も全てオンラインで行い、自室で収録した映像も当日の作品に織り込まれていました。

 

作品を作った中高生も、観客も、今だからこそ生まれた作品で、今しかできない経験をできたのではないかな、と思います。

 

  

 

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photo by bozzo

 

  

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photo by bozzo

 

 

『ハムレット』は、複数の展示作品として、完成しました。「『ハムレット』に登場する亡霊をお客様に感じさせる」ことをテーマに、どんな表現方法をとるかチームで議論し、作品作りが行われました。

 

あるチームは、第一幕第二場のハムレットとホレーシオの会話を、L I N Eの会話で表現しました。同ハムレットとホレーシオの会話話は、音声収録もされており、時折場内で聞くことができます。セリフの発話も、幾分感情を抑えた形で演出されており、鑑賞側の想像力に訴える作りであったように思います。

 

照明チームの作品では、影絵で人の一部を表現したインスタレーションを制作し、会場の複数の箇所に展示しました。近づいて、じーっと眺めているお客様が多かったのが印象的です。きっと影絵を見ながら、想像力を膨らませていたに違いありません。

 

圧力・嗅覚チームでは、そのチーム名の通り、五感を使って、ハムレットの世界を感じられる「ハムレッシャーの道」というアトラクション作品を制作しました。案内役に導かれて、「ハムレッシャーの道」を進むと、空気砲で、風圧を体感できたり、王の亡霊をイメージした高貴な香りを感じたりできました。

 

音響チームは、音を通じて『ハムレット』の亡霊を感じさせるような「ハムレトロ」という作品を制作。他のチームの音と干渉しないようにしながらも、ハムレットの世界観を表現し、かつ場内の統一感を演出していました。

 

創作した中高生にとっては、頭を捻る経験だったのではないかと思いますが、作品作りの自由さ、無数の可能性を感じられたのではないでしょうか。

 

 

 

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photo by bozzo

 

 

 

『リチャード三世』では、全4チームに分かれて、リチャード三世とアンの駆け引きのシーンを上演しました。ホールの空間を広く使って、対面でお芝居をします。同じシーンでも各チームで演出が大きく異なり、演じている役者の個性も生きた上演でした。

 

各チーム数回ずつ、上演の機会があったため、回を重ねるごとに、俳優同士の呼吸があってきたり、のびのびと演じられるようになってきたり、本番の経験はやはり役者を成長させるものだな、と思いました。

 

立派に本番を終え、はけた後「うまくできなかった、悔しい……」と漏らして次の本番に奮起していたり、笑いながらはけるシーンで心から楽しそうだったり、この一日の経験は、参加した中高生にとって、間違いなく劇的で、忘れられない経験になったのではないかと感じました。

 

 

 

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photo by bozzo

 

 

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photo by bozzo

 

  

  

コロナ禍で、やっと演劇の公演が再開し始めた時期に、上演をすることのできた2020年のT S P

 

おとなの演劇人の私としても、様々な演劇を浴びるように体感できた“展示型演劇”は、普段とは違った苦労も多い創作活動には違いなかったですが、今だからこそ、出逢えた作品であり、空間であり、経験だったと感じています。

  

演出家の仕事は、脚本を解釈して、俳優に演技的な指導をする役割の人と見られがちですが、登場人物の設定を追加して表現の補助線を引いたり、様々なことを面白がって、要素を抽出し、作品に生かせる形で俳優に手渡したりすることも仕事の一つだと思うのです。

  

T S Pの創作を通して、総合ディレクターをされていた遊里さんの作品を生み出すパワーをひしひしと感じ、八王子学生演劇祭で、参加者の皆さんと描く「家族」はどんな形になるだろう……!きっと創作過程も楽しいに違いない……!と思いを馳せるのでした。

  

いままでに経験したことのない劇的な経験を探しに行ける、開かれた場が、T S Pであり、八王子学生演劇祭だと思います。

  

多くの学生さんが、その一歩を踏み出してくれたら。

  

一演劇人として、私も嬉しく思います。

 

 

 

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photo by bozzo

 

 

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〇早坂彩氏 プロフィール

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演出家、脚本家。トレモロ主宰。青年団演出部所属。

中学時代、シェイクスピア『から騒ぎ』を演出し、演劇の道を志す。無類のシェイクスピア好き。コロナ渦より、オンラインでシェイクスピア戯曲を読む「Zoomで戯曲研究会」を定期的に主催している。

早稲田大学文学部演劇映像コース演劇系、同大学院文学研究科演劇映像学専修演劇系(西洋演劇)にて、現代ドキュメンタリー演劇を研究対象とする。

シェイクスピア作品などの翻訳劇の演出から、現代口語劇の演出、ミュージカルの脚本・演出まで演出実績は多く、空間演出の巧みさには定評がある。

2015年、利賀演劇人コンクール2015『イワーノフ』優秀演出家賞・観客賞受賞。

 

 

 

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最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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